地平線まで
インスブルックは、両側に2,000メートルを超える峰がそびえる狭いイン川の谷にあり、進入経路は谷の曲がりに沿って進みます。航空会社は、そのための特別な訓練を受けた乗員しか送りません。香港の空港は、平らに削られ、海を埋め立てて広げられた島の上にあり、滑走路のすぐ背後にはランタオ島の山々がそびえています。こうした空港をありのままに見せるなら、フェンスのところで止めるわけにはいきません。
美しい3D空港をひとつ手作りすることはできます。何千もとなると無理です。そこで場面はオープンデータから組み立てています。滑走路、誘導路、駐機スポット、建物はOpenStreetMapから、地形は地球全体を250万枚のタイルで。タイルが地図とずれると滑走路の灯火が海の中に入ってしまうので、1枚残らずぴったり合わせる必要があります。
山腹は場面の太陽で陰影が付くので、インスブルックの上のアルプスには、見ているまさにその時刻の日なたと日陰ができます。地面は硬い縁で途切れず、地平線に向かって空のかすみに溶け込んでいきます。機体がかすみに消えることはありません。


本物のドバイ空港では、滑走路の周りに芝生は生えていません。誘導路の間は、ドーハやリヤドやフェニックスと同じく砂と砂利で、緑があるのは誰かが水をまいているからです。ところが私たちは長いあいだ、世界中をプラハのように描いていました。どの滑走路の周りも鮮やかな緑の芝生です。プラハならそれで正解でした。砂漠では、アラビアの真ん中にゴルフ場を落としたように見えました。きっかけは単純な質問でした。ドバイは芝生ではなく砂漠であるべきでは? そのとおりです。
誘導路の間の地面が何色かは、地図そのものからは分かりません。草地が描かれていることは多くても、その色までは描かれていないのです。そこで世界中のすべての空港、4万8,000か所に、自由に使える2つの科学的な地図から、あらかじめ景観を割り当てました。ケッペン=ガイガーの気候区分と、地表を覆うものを示す衛星地図ESA WorldCoverです。前者は空港周辺の気候が乾燥しているか、雨が冬に降るか夏に降るかを教えてくれます。後者は近くにどれだけ裸地があり、それが何色かを教えてくれます。衛星から取るのはその数値だけで、何かの形を取ることはありません。物がどこにあるかは引き続きOpenStreetMapから描くので、何も動かず、何もぼやけません。
2,007の空港が砂漠、6,141の空港がステップになりました。砂漠はどこも同じではありません。湾岸はベージュ、ラスベガス周辺のモハーヴェ砂漠は灰褐色、フェニックスのソノラ砂漠はほとんど茶色です。デンバー、ソルトレイクシティ、マドリードのステップはもっと暗く、何かが生えています。約3万7,000の空港はまったく変わらず、プラハ、ロンドン、サンパウロもそのひとつです。
季節のことも考えました。地中海沿岸やカリフォルニアでは冬が緑で夏が乾くので、ローマ、アテネ、サンフランシスコでは芝生が夏に枯れ草色になり、冬に戻ります。パースも同じですが、夏は1月です。ヨハネスブルグとメキシコシティは逆に冬に乾きます。雨が夏に降るからです。場面は表示している日付に従うので、1月の一日を再生すればサンフランシスコは緑です。このように季節で変わる空港は約2,750か所あります。
意外かもしれない細部もいくつか。地図が把握している公園やゴルフ場など、水をまいている芝生は砂漠でも鮮やかな緑のままです。現地でもそう見えるからです。誰かが水をまいている緑の島です。砂はわざとコンクリートより一段明るくしてあります。そうしないと誘導路が砂に紛れてしまうからです。写真のフェニックスは私たちの描画より暗いのですが、ここでは空港の見やすさを優先しました。夜は砂もほかのすべてと同じく青みがかったグレーになり、雨の後は光り、雪が積もれば芝生と同じように白くなります。2つの地図はどちらも作者のクレジットを付ければ自由に使え、それによって地面の色が変わった空港では、地図の出典一覧に記載しています。


管制塔から、窓辺のカメラとともに
管制塔は、管制室からすべての滑走路と誘導路が見える場所に建っています。大きな空港では、窓から見えない隅のために、管制官はいまも地上レーダーを使っています。「管制塔から」をタップすると、私たちのカメラが管制室に上がり、管制官の目の高さに立ちます。管制塔は地図にどう記録されていても認識され、夜は管制室に明かりがともります。
ライブカメラは手作業で選び、私たちのサーバーがそれぞれを12分ごとに自分で確認しています。ボタンが空港に表示されるのは、直近30分以内に配信が本当に行われていた場合だけなので、止まった動画につながることはありません。再生を押すまで、動画サービスからは何ひとつ読み込みません。カメラの設置場所と向きが分かっている場合は、3Dのカメラをその位置に置くこともでき、その位置が推定であることをはっきり示します。
ネットの動画はたいてい現実より5〜30秒遅れます。場面は機体を同じだけ遅らせて表示し、映像と地図で接地が同時に起きるまで1秒単位で微調整できます。地図と3Dを行き来しても、カメラのウィンドウは開いたままです。

前方のドアへ架かる橋
本物の空港では、搭乗橋が機体に近づけるのは、胴体の赤い衝突防止灯が消えて、エンジンが止まったことが分かってからです。それから旅客が実際に使う左前方のドアに接続します。私たちの搭乗橋は、機体がスポットに1分間止まってから伸び、同じく左前方のドアで止まります。機体や隣の搭乗橋を突き抜けることは決してありません。余裕がなければ通路が縮むか、向きを変えるか、描かれません。ATRには搭乗橋が付きません。メインのドアが後ろにあるからです。小型機、ヘリコプター、ビジネスジェットにも付きません。
JFKとアトランタは、地図データにそれぞれ150を超える搭乗橋があります。プラハにはひとつもなく、フランクフルト、マドリード、バルセロナ、ローマにもありません。そこで搭乗橋が地図にないターミナルでは、機体が建物に機首を向けて止まるスポットから搭乗橋を導き出します。搭乗橋が地図に載っている20の空港で、答えを見ずにこれを試しました。導き出した搭乗橋の88%は、本当に搭乗橋があるスポットに立っていました。
夜の搭乗橋は周りの建物と同じ色になり、ガラスはターミナルの窓のように光ります。


空の回廊
ILSは2本の見えないビームで機体を滑走路へ導きます。ローカライザーが機体を中心線上に保ち、滑走路の端から少し内側の脇に立つグライドスロープの送信機が、通常3度の降下角に保ちます。天気がよくても乗員は同じ線を飛ぶので、到着機は細い回廊に集まります。
ヒースロー上空では、私たちのネットワークが過去24時間に受信した位置が、機体が実際に飛ぶ回廊を描き出します。ロンドン上空の長い到着のカーブ、西へ扇状に広がる出発。回廊のどの点も少なくとも3機の異なる機体に支えられている必要があるので、そこから1便だけを読み取ることはできません。
グライドパスを描くのは、ILSのアンテナが地図上に実際に存在する場所だけで、標準の3度です。プラハとヒースローにはあります。JFKでは地図がローカライザーしか把握していないので、地上のコースだけが、そうと分かる表示付きで見えます。東京の羽田は、地図にまだどちらもありません。


搭乗橋は旅客が実際に使う左前方のドアで止まります。ATRには搭乗橋が付きません。ドアが後ろにあるからです。